人生の教科書のような物語
2020年12月21日 - スナップ

(c)Tatsuo Iizuka
コロナの影響で暇な時間を持て余す今年は、いつになく本を読んでいます。
まあそれしかないっていう感じで。
この頃読み続けてるのが宮本輝の「流転の海」という小説です。
これは全9巻。1982年から始まり完結編が2018年。何と36年に及ぶ大作なのですよ。
1巻が400ページほどのボリュームがあるのですが、面白くて読むのを止められない感じで
どんどん読み進め、先ほど6巻を読み終えところです。
あと3巻。早く読みたいような、読み終えたくないような。
こんな大作を読むのも初めてですが、ボリュームを感じず読み進められる文体の小説も初めてかも知れません。
内容は宮本輝の自伝的小説で、主人公は父親の熊吾と少年期の伸仁こと宮本輝。
戦後から高度成長期の混沌とした日本で、粗野だけど人の機微を見る眼があり、商才があり、大将と呼ばれながらも波の浮き沈みに翻弄される熊吾の人生。
その父が50歳のときに病弱に生まれながらも、父の元で徐々にたくましさを身につけていく伸仁の成長ぶり。
そこに数多の人たちが絡まり合いながら、生きるということをあぶり出していくのです。
舞台が主に大阪ということで、見知った土地で繰り広げられるのも個人的にうれしいところ。
今読んでいる箇所は昭和36年頃。ボクが生まれる7年前の大阪の様子、市井の人の暮らしぶりがつぶさに描かれるているのも興味が尽きません。
また2巻あたりの舞台は熊吾のふるさと南宇和(愛媛)ののどかな村。読みながらGoogleマップで追ってみたりしましたが
北海道とはまるで違う地勢。いつか訪れてみたいなと思っています。
そして熊吾の話す宇和弁?を、現地で聞いてみたいと思うのです。
今、コロナで大変な状況ですが、戦争時はもちろん昭和の高度成長期くらいまでは病気で早死にする人も多かったようです。
食べていくことすら事欠く人も少なくない中で、生きるということに懸命だった時代だったのですね。
50歳で授かった伸仁を20歳になるまで育て上げるという熊吾の思いは、生きるために身につけるべきことが書いてるかのようで
人生の教科書のように感じるのです。
北海道/岩見沢市
SONY α7s FE55mmf1.8
岩見沢の夜
2020年12月19日 - デジタルモノクローム



(c)Tatsuo Iizuka
今回利用した「道北一日散歩きっぷ」はエリア内の乗降が自由ということもあって
滝川、富良野、美唄、砂川で途中下車しました。
空知地方の中では主要な市にある4駅ですが、駅前には食料品を買うお店がありませんでした。
駅のキオスクはとっくに絶滅してますし、コンビニは国道沿いまで行くしかありません。
ドリンクの自販機はたくさんあって困ることはありませんが、小腹が空いてパンなり菓子なりを途中で買いたいと思っても
列車を乗り継ぐ旅ではなかなか難しいものがありますね。
砂川駅前に古くからある喫茶店は変わらず営業しているようでした。
灯りがついているとホッとします。
北海道/砂川市
RICOH GR3




(c)Tatsuo Iizuka
先日JR北海道で「道北一日散歩きっぷ」なるものがあるのを知って、久しぶりに乗り鉄してきました。
エリア内の普通列車が一日乗り放題で2,540円というものです。
まずは旭川駅から滝川駅まで行き、根室本線の東鹿越駅まで行って折り返しの旅程です。車両は大好きなキハ40。
根室本線は2016年の大雨と増水被害以来、東鹿越駅ー新得駅間が4年経った現在も不通のため滝川からは東鹿越までしか行けません。
その東鹿越駅(写真2枚目)はかなやま湖岸にあり、駅周辺には石灰石の鉱業所以外民家は一軒もない無人駅です。
せめて南富良野の中心である隣の幾寅駅まで数キロの線路を復旧させれば通学の高校生たちも喜ぶでしょうが、JR北にはその気が全くなく、根室本線を廃止させたくて仕方ないという感じがありありです。
もっとも列車に乗ってみると、乗客はまばら。
かつて沿線の赤平や芦別の石炭輸送や、石勝線が開通するまで札幌と道東を結ぶ大動脈だった頃に比べ、乗客は激減。
富良野〜新得間では昭和50年から63分の1にまで減少しているそうです。(滝川駅に置いてあったJR北製作のパンフレットより)
車中ではキハ40のやわらかいボックスシートに身を委ねて、ゆっくり移ろう車窓をただただぼんやりと眺めているだけ。
旧産炭地の赤平や芦別あたりでは、古い住宅や商店がそれなりに連なっています。
ところが家の玄関は当然併走する道路に面していて、線路側に向いているのはどれも建物の裏側なんですね。
すると車窓からあちこちのお宅の裏側の顔が見えて、なかなか興味深いものがありました。
玄関側はどのお宅もそれなりに身繕いしてあるものですし、場合によっては部分改修したりして整えてあるものですが、
裏側って素のまんまなんですよ。
列車から見えてしまうからキレイにしとかなきゃ。ってなかなか思い至らないですよね、きっと。
家の裏側にこそ、個性や、歴史や、生活臭が現れるのかも知れません。
北海道/赤平市・芦別市・南富良野町
RICOH GR3

(c)Tatsuo Iizuka
かつての市営住宅。その多くが空き家になって窓や入り口がベニヤで閉ざされています。
産炭地にはこのような団地を何棟も見かけます。
雪の撮影に出掛けるときに参考にするのが気象庁のサイト。
積雪の深さ一覧表
と天気予報に、スマホの雨雲レーダーを見ています。
この日は日暮れから雪が降るという予報だったので三笠に向かいました。
到着してみると東川町とは大違い、すでに腰くらいまで積もっていました。
さすがの豪雪地帯です。
冬は日本海からやってきた湿った雪雲が西から東に移動する途中、北海道の中央部の山並みにあたり
その手前の町に雪を降らせます。それが音威子府・幌加内・岩見沢・三笠・倶知安・ニセコあたりの豪雪地帯になります。
しかし、月明かりが照らすほどの快晴で、ついぞ雪は降ってくれませんでした。
予報が外れたようですが、まあ仕方有りませんね。
三笠からは十分帰宅できる距離ではありますが、この日も車中泊で一夜を過ごします。
ところが寝袋に入ろうとするくらいの時刻から、車にたたきつける激しい雪の音。
それが翌朝、目覚めてもまだ降り止まず。
どんどん勢いを増してくるようです。いくら下ろしても車が雪まみれになっていきます。
雨雲レーダーをみても西からの雪雲が帯状になって
断続的に三笠のあたりだけを通り続ける予報になっています。
だんだん恐ろしくなってきました。
道の駅で2時間ほど様子を見ていましたが
雪がやむ目途も立たないので、えいやと車を走らせました。
激しい雪でホワイトアウト。視界不良の中の運転は肩が凝りました。
しかしそれも隣の美唄市を過ぎる頃には雪雲の帯を抜け、
晴れ間が広がるのを見て、ほっとしたのでした。やれやれ。
甘く見てると痛い目に遭いますね。
以後気をつけます。
北海道/三笠市
SONY α7s FE55mm1.8
2020年の記録 6
2020年12月05日 - スナップ

(c)Tatsuo Iizuka
かつての一大産炭地三笠。
ここで掘られた石炭を運ぶために、北海道で最も早く小樽港までの鉄道が敷かれたというから
その栄華の様子がいかほどであったのかうかがい知れますね。
炭坑も鉄道もとっくに廃止となっていますが
独特の正三角形の赤い屋根の炭坑住宅が4棟残っています。
煙突の数からして6軒が連なった長屋。
この前日から大雪に見舞われて雪かきに精を出す人が左に写っていますが、他にお二人いらっしゃいました。
数軒はまだお住まいになられているようです。
右の丘を上がったところにも何棟か同じ住宅がありましたが、何年か前に取り壊されてしまい、今は更地になってます。
最後の砦のような炭坑住宅。通る度に「まだあった」と姿を確認できるとほっとします。
北海道/三笠市
PENTAX645D A75mmf2.8
※2017年に撮った写真を見返したら、全部で6棟ありました。手前にあった3棟が取り壊されていたのです。
現存する3棟が永く残りますように。

(c)Tatsuo Iizuka
農村地帯に行くと青く塗られたトタンの納屋を多く見ます。
不思議に思ってたところ
以前、近所の農家のおじさんが「青いペンキが昔良く安売りしてたからだよ」
って言ってましたが、真偽のほどはいかに。
この青色の出方もCCDセンサーらしく思えます。
気のせいかも知れませんが、思い込みは大切です。
それにペンキを何度か重ね塗りした跡のそれぞれの質感が感じ取られるのは中判センサーのおかげでしょう。
やはりミドルレンジからロングレンジ(距離)の描写には差が出ますね。
ただ単にエッジが効いて解像してるのではなく、被写体の持つ丸味までも描いてくれるから
寒いのにクールな絵じゃ無く、血が通うような気がします。
高解像度のフルサイズセンサーと撮り比べた訳じゃないですけど、思い込みは大事です笑
そんなPENTAX645Dですが、10年前の古い機種につき手に入れるには中古しかありませんが20万円強ほど。
レンズはマニュアルフォーカスのPENTAX645初期型のAレンズシリーズが、ものすごく安くて
A45mmmf2.8 A75mmf2.8 A150mmf3.5 この3本で5万円ほどでした。
そのうち A150mmf3.5は未使用のデッドストック品で16,000円。
ボディと広角・標準・望遠レンズを揃えて約25万円ですから、リーズナブルでしょ?
ちなみに×0.8倍で35ミリのフルサイズ換算になります。
ファインダーは大きくてとても見やすく、日中ならピント合わせが愉しめます。
レンズの写りはどうなんでしょうね。
歪みとか、ボケが汚いとか、逆光に弱いとか、コントラストが低いとか、条件によってパープルフリンジが激しく出るとか
ありますが、極端な条件で無ければ普通に写ってくれるので間に合ってる感じです。
センサーにゆとりがあるせいか、35ミリフルサイズほどレンズにシビアにならなくても良さそうな感じがします。
オートフォーカス用のPENTAX FAレンズが現行ラインナップされてますが、さりとて多くが10年以上前の設計なので写りが素晴らしく良くなるとは思えません。
加えてAレンズは、AF駆動の機構が入っていないので、すごく小さくて軽いのです。
ボディがでかいだけに、レンズが軽いと非常に助かります。
ボディにもレンズにも手ぶれ補正機能はついてませんが、ミラーやシャッターのショックが少ないので
結構手持ちでもバンバンいけます。
でも三脚に据えて撮るスタイルも、それはそれでなかなか良いものですよ。
そもそもレスポンスがよろしくないカメラですし、高感度に強い訳ではないですから。
フィルム時代の中判カメラの感覚で撮るようにすると、ストレスを感じることなく愉しめるカメラです。
またボディが大きい分、機能毎にボタン類もしっかり大きく備わっているので、この時期手袋しながらで操作が容易なのもナイスです。
SONY α7sはボディが小さい分、ボタンは爪で押さなきゃならなかったり、メニュー画面を開かないと設定できない機能が多くあったり、冬の凍えながらの操作はなかなか腹の立つこと多く、PENTAX645Dの造りの良さはさすがと感じます。
北海道/幌加内町
PENTAX645D A150mmf3.5

(c)Tatsuo Iizuka
旭川近郊でも根雪になりそうなくらいの積雪がありました。
ではと、ひとつ峠を越えた幌加内に足を伸ばしてみると
そこは、さすが道内屈指の豪雪地帯。
ひと月くらい先行く感じの積もりっぷりでした。
2018年には北海道記録の313cmを記録しています。
豪雪の夜
そして夕刻、これまた見事な降りっぷり。
ピントが良く分からないくらいで、ピンぼけ連発でした・・・。
行きは良い良い帰りは怖い。とはよく言ったもんで、
峠を越えるまで前が見えないほどの吹雪。
旭川市内に入ったら、雪はなくとも路面がツルツル。
撮るには良くても、運転するにはやっかいな季節になりました。
北海道/幌加内町
SONY α7s FE55mm1.8