


津軽中里。どうしてここに津軽鉄道の終点が置かれたのか。どうして津軽鉄道はこの町を目指したのか。
今となってはその理由を見つけ出すのは難しい。
みちのくひとり旅の最終日に出向いた、小島一郎写真展「北を撮る」(青森県立美術館)http://www.aomori-museum.jp/ja/exhibition/22/は素晴らしく見応えのある写真展だった。
今回この写真展の会期に合わせて旅の日程を組んだのだけど、これを見逃していたならきっと後悔したであろう。
雑誌「風の旅人」で初めて小島一郎の写真を見たときの衝撃は大きく、今回その写真展が開催されると知り、これはと臨んだ旅でした。
写真展示の中でも「トランプ」と名付けられた、名刺サイズの小さいプリントの一枚一枚の力強さ。これにもっとも心を引きつけられた。
ベタ焼き代わりの小さいプリントだが、これを写真仲間に見せたり、編集者への売り込みの際にも使ったという。
昭和30年代の津軽を撮り続け、フリーの写真家を目指し上京するも夢破れ、再びふるさと青森に戻るも無理な撮影がたたり、39才の若さで亡くなった小島一郎という生き方。
カメラを持つ者として、おまえは何を撮り残せるのか?と問い詰められた写真展でした。
写真集と複製プリント(リミテッドエディション入り)を2枚購入、みちのくの思い出と一緒に持ち帰る。
写真展は3月8日まで青森県立美術館で開催中。
CONTAX T2 Sonnar 2.8/38mm

夕張に行ってきた。
自身初のCDジャケットの撮影依頼を受け、指示されたロケ地が夕張だった。
チープ広石さんと、JUNCOさん、2人の新しいユニットのアルバムだ。
チープさんと言えば「シャイニン・オン君が哀しい」を大ヒットさせた、あの「LOOK」のサックスプレーヤーだ。1985年の作だからボクがまだ大学生の頃、あちこちで流れてた曲だ。
そんな方と、何の因果かご一緒することになり、氷点下15度の夕張の朝、撮影をスタートさせた。
ボーカルとピアノのJUNCOさんに至っては、シャイニン・オンの頃はまだ小学生だったはず。それこそどういう巡り合わせか、師のような存在になるなんて、人生とは、出会いとは何とも面白い。
ロケ撮のあと、ライブシーンの撮影も手応え十分で終了。
力のある人にレンズを向けると、吸い込まれるようにどんどんと撮影が進んでいく。
アルバムは3月中旬の発売。CDジャケット、そのあとに続くツアーポスターなんかにも写真が使われることになる。写真もそうだけど、アルバムの仕上がりがとても楽しみだ。
撮影は日の高いうちに終了したけど、そのまま夕張の安宿で一泊。
夜の夕張の町を白黒詰めたローライ持って散策する。
夕張はあの財政破綻で騒がしかった時期に敬遠して、撮影に行くのは3年ぶりだったけど、変わりようにちょっと驚いた。
昔ながらの味わいある町の風景がだいぶなくなって、小綺麗になり、それが賑わいをもたないものだから余計に寂しく映ってしまう。
体の芯まで冷え切って部屋に戻ると、風呂に張るお湯が出ない。ここは東南アジアの安宿か。夜は管理者不在。仕方なく背中と腰にカイロを貼り付けて、缶ビールをあおって床につく。
EOS5DMarkII EF35mmf2

まだ明け切らぬ青森駅に降り立ったあと、奥羽本線、五能線と乗り継ぎ津軽鉄道の五所川原駅へ。白々と見えてくるのはりんご畑。
冬の津軽鉄道と言えばストーブ列車。古い客車列車にはだるまストーブがたかれている。燃料は石炭だ。
これは見せかけではなく、れっきとした(?)唯一の暖房装置。
車両には日本国有鉄道昭和29年製のプレートが。
当時の暖房と言えば蒸気機関車から出るスチームを客車内のパイプに引き込む方式だった。しかし国鉄から譲り受けた津軽鉄道には蒸気機関車も蒸気を出す装置を持ったディーゼル機関車もなく、石炭ストーブで暖をとったのだ。
それが今に引き継がれている。
もっとも、津軽鉄道には新型のディーゼル車両も導入されていて、快適に住民を運んでいる。
手間も経費もかかるストーブ列車は引退の危機に遭ったが、冬の風物詩としてイベント的に残されている。
ストーブ車両に乗るには別途300円が必要。編成には快適な新型車両も連結されていて、地域住民は当然そちらに乗る。だから、ほっかむりした田舎のおばちゃんがストーブに手をかざす・・・といったシーンは今や見られない。
ストーブ車両に乗り込むのは、好き者だけなのだ。
しかし、そんな事情はどうでもよく思えるほど、ストーブ列車の短い旅は素晴らしい。
だるまストーブもさることながら、木の床、ニス塗りの椅子や窓枠。ガタゴト響かせながら走り、がくんっと停まる。
出来ることなら3時間くらい乗っていたかった。
R-D1s G Biogon2.8/28mm
夜行急行「はまなす」
2009年01月26日 - R-D1s



札幌から青森行きの夜行急行「はまなす」に缶ビールと缶ウイスキー水割りとともに乗り込む。
夜行急行は今や日本全国で3本のみ。「きたぐに」「能登」そしてこの「はまなす」。
札幌を22時に出て、終着青森は翌5時39分。そのまま乗り継いでいけば飛行機より早い時間に仙台あたりまでなら着けるのではないか。
しかし全体の乗車率はやはり低い。だけど「のびのびカーペット車両」だけは満席。
何故なら指定料金だけで、横になって過ごせるのだ。枕と毛布は完備され、隣席との顔にあたる部分にはカーテンが引かれるようになっている。しかも上段はほぼ個室状態になっていて8席しかないチケットは入手困難のようだ。
上段は取れず下段に乗り込む。それでも予想より居心地がいい。
秘密基地にいるような気分で、窓から流れる雪の夜の風景をしばし楽しんだ。
夜行列車に乗ったのはいつ以来だったろう?と記憶をたどると、15,6年前のGWに北海道旅行するために乗った上野ー青森間。行きは臨時急行八甲田の座席車(確か12系のリクライニング無し)。帰りは583系の3段B寝台「はくつる」だった。
静岡県は沼津市でサラリーマンをやってた頃のことだ。
などと想いを馳せてると、千歳を過ぎた頃には睡魔に襲われ、いつの間にか車内アナウンスは函館到着を知らせている。午前3時頃。こんな時間なのに、何人か下車した模様。
レールのジョイント音が変わったので、おそらく青函トンネルのロングレール上を走ってるのかなあと覚醒しかけたけど、起きたのは青森到着のアナウンスだった。
写真展「identity ヌプルコルカムイノミの記録」
2009年01月26日 - 写真展情報

先に写真展のご案内を。
飯塚達央の写真展「identity ヌプルコルカムイノミの記録」を2月3日(火)から2月16日(月)まで、東川文化ギャラリーで開催いたします。
ヌプルコルカムイノミとは、険しい山の神への祈りという意味で、大雪山の山開きのアイヌ民族の伝統儀式です。
webギャラリーhttp://www.photoseason.net/identity/で既出のも含め、全紙~A1サイズの大きめのプリントで展示いたします。
開館時間は10時~17時30分で最終日は15:00まで、入館料が町民100円、町外の方200円がかかります。
在廊日程は未定ですが、初日3日(火)、7日(土)午後、8日(日)午前、は今のところ会場に居る予定です。あとは決まり次第お知らせします。

何から書けばいいのか分からないほど、楽しかった「みちのくひとり旅」。6日間を終え、昨夜遅く帰宅しました。
良く乗ったし、良く歩いたし、良く浸かったし、良く呑んだ。
汽車旅なので、スケジュールは分刻み。ローカル線なので、乗り遅れると大変。だけど乗っちゃえば、気楽なことこの上ない。ボックスシートに足を伸ばせば、後は缶ビールのロング缶。
ひたすらぼけーっと車窓に流れる風景を見てるだけ。持っていった文庫本も、結局5ページくらいを読んだだけ。
行き先は結局青森県と秋田県のみに絞った。
それでも津軽鉄道。JR五能線。秋田内陸縦貫鉄道。弘南鉄道大鰐線・黒石線。の5路線を走破。
町歩きでは、青森県金木町、秋田県湯沢市、青森県黒石市がとても良かった。
雪が少なくて残念。暖かかったのは助かったけど。
しばらくは東北の写真が続きます。おつきあいを。
今回の行程表。自身の備忘録のために。
白崎弘幸写真展「BLUES & WHISTLES」
2009年01月18日 - 写真展情報

写真仲間で札幌在住の「白崎弘幸さんの写真展BLUES & WHISTLES」が神戸のTANTO TEMPOで開催中です。
主に札幌の都市風景を独自のカメラアイで描き続けている白崎さん。
夜の写真が多いのは、勤めが終わって、解き放たれた時間に撮影しているからなのでしょう。撮影者のワクワク感が写真に詰まっているように思います。
タイトルにあるWHISTLESって何て読むのと辞書を引いてみたら、ホイッスル・口笛っていう意味なんですね。口笛でブルースを吹きながら、撮影したといった感じなのでしょうか。
会期は25日まで。24日には白崎さんのギャラリートークがあるようです。
関西圏にお住まいの方は、是非。
TANTO TEMPO次回展は萩原義弘氏の「SNOWY」。これも見てみたい。神戸で面白いことやってるギャラリーだなあ。

夜の帳が降りた町。繁華街の一本外れが、散策し甲斐のあるあたり。
町の栄華を見続けてきたことであろう。 帯広にて
帯広へ連れて行ったCONTAX T2。
実はボクのファーストツァイス。
まだサラリーマンだった13、4年前に買って、その写りに驚いた。
「高級コンパクトカメラ」というカテゴリーがあった頃のこと。
以来、ハッセル、コンタックス135ミリ、コンタックス645、ローライとツァイスにのめり込んでいく。
今回ホント久しぶりにT2を持ち出して、今日暗室で現像して、バライタにプリントして、東北行きの相方に決めた。
コンパクトサイズ。あのちっちゃなレンズで、このトーン。
異論はない。
サブのデジタル(カラー担当)はR-D1s。レンズはG Biogon28mm。
やっぱりツァイスか。
サラリーマンを辞めて、東南アジアの旅に出た。北海道に移住する前、13年前のこと。
そのとき背負ってたバックパックを背負って、今回東北へ行ってきます。
思えば当時の相方もCONTAX T2だった。
CONTAX T2 Carl Zeiss Sonnar2.8/38mm T*
ボディに刻まれた文字が何とも誇らしい。

11月頃の北海道新聞で紹介されてた一枚の絵、「あと一時間・・・」(松本早苗)が気になっていて、その絵が飾られている「フロンティア展」を見に帯広の道立帯広美術館まで足を運んだ。
一枚の絵を見に行きたいという衝動は初めてかも知れない。
帯広まではJRの快速「狩勝」で片道3時間。といってもディーゼルの一両編成。普段富良野線を走ってる普通列車を延長して走らせているだけの味気ない道中。
それでも文庫本読んだり、うつらうつらしたり、ぼーっとしたり、考えようによっては贅沢な時間を過ごす。
帯広に着いてネットで調べた店に行き、ちっとも旨くない名物「豚丼」とそばのセットを喰らい、バスに乗り継ぎ美術館へと向かった。
道東にゆかりのある作家で構成された「フロンティア展」では絵画の他に、版画や、立体物などが展示されてあったが、ひとつひとつの作品の存在感に圧倒された。
それに比べて写真ってどうも、物としての存在感に劣るように思えてならない。
2次元の表現なので致し方ない面もあるが、印画紙あるいはインクジェット用紙のテクスチャー、マット、フレーム。大きさ、厚み、材質。もっとこだわらなきゃいけないなと思う。(とは言え、こだわった分お金も掛かることなので容易ではないが)
ディスプレイで見るのが主流となりつつある中で、なおさら一枚の写真の存在感を出したいなと思うのだ。
最近旅心がついてきて、ついに札幌発青森行きの夜行急行「はまなす」の指定券を確保。「みちのくフリー切符」旭川発6日間乗り放題23,000円!で「みちのくひとり旅」と洒落込んで来ます。出発はもうちょっと先。ただいま連れ合いとなるカメラのセレクト中。こういう時間も旅の愉しみのひとつ。
上の画像はRICOH R10。帰りの汽車まで日の暮れかかる帯広の町を散策。凍結路に何度も転びそうになりながらのスリルあるスナップ。
morning glory
2009年01月11日 - 5DmarkII