少しセンチな旅

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北海道の東の方に位置する別海町で大竹伸朗の作品展が行われている。会場になっているのは酪農家のお宅のサイロを改造したミニギャラリー。
なんでそんなところでやってるかと言うと、18歳だった大竹青年がその酪農家族のところで居候して半年ほどを過ごしていたのだと言う。牛の世話をする合間に青年は絵を描き、写真を撮り残した。
その当時の作品を期間限定で展示しているのだった。

その中の一枚の牛の絵に心惹かれ、なぜか涙が出そうになった。
そのときはなぜだかその理由がわからなかった。

サイロのギャラリーでは酪農家のご夫妻がおもてなしをしてくださった。初対面だとかそういう分け隔ての全くない方だった。「伸ちゃん、今日の夕方に来ることになってるから、それまで居なよ」って言ってくれたのだけど、「ここにいるとお尻に根っこが生えそうだから」と言って辞することにした。昔の居候時代の記事を読んだとき、厳しいご主人だったと書いてあったはずなのに、そんな様子は微塵もなかった。まるで我が子の出世ぶりを喜ぶ父母のように見えた。

帰り道、牧草とも荒れ地とも見極めがつかない荒涼とした風景を見ながら車を走らせていると、どこか見覚えがあるのに気がついた。
それは釧路湿原の近くにある鶴居村の牧場の風景だった。
今から12年前、会社を辞め放浪していた時、ボクは鶴居の民宿でひと月居候させてもらっていた。その間の短い期間であったけど、鶴居のいちばん奥にある牧場でアルバイトをさせてもらったのだ。早朝に出て、昼前に終わるアルバイトの道すがらの風景に、今見ている別海の光景が重なった。
アルバイトは牛の糞掃除だった。でもスーツを着て、ネクタイしめていた数ヶ月前の暮らしより充実した気分でいられた。それは肉体的なキツさを伴っていたからかも知れない。数日経つと牛とボクの距離も縮まり、おしっこを浴びせられることもなくなった。そんなことが嬉しかった。
牛舎のご夫妻にも、宿のご主人にもお世話になったはずなのに、すっかりご無沙汰してしまっている。
さっき18歳の大竹伸朗が描いた牛の絵を見て、涙が出そうになった理由が分かった。
いつか、自分の写真集を持って、こんな写真を撮ってますと訪ねられるようになりたい。

旅は、人を少しセンチな気持ちにさせる。
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にわかファンのボクが説明するのも何ですが、大竹さんは拠点を東京から四国の宇和島に移し、創作活動を行ってます。そこから世界に出向き、発信しているのです。
18歳の頃北海道で撮った写真と絵は作品集「18」に収録されています。白黒写真が何ともすばらしい。18で、こんな目線でいられるなんて。
17:10 | R-D1s | comment (-) | trackback (-) | page top↑