白黒写真は止められない

暗室を引っ越した。東川町の貸し暗室にだ。町の貸し暗室があるのはさすが「写真の町 東川町」だ。もっとも老朽化して使わなくなった保健施設だか何だかの調理室を改造して、地元の写真クラブが管理を請け負っているのだが。
かなり年季の入った建物で、当然のことながら光が入らないせいもあって辛気くさく、快適で過ごしやすい暗室とはいかないけど、引き伸し機が全部で13台あって、中央にシンクが設置されている大きな暗室だ。複数名での使用が可能だが、年に数回のイベント以外では数人が個人的に使っているだけになっている。
暗室機材の多くは、北海道新聞社から寄贈されたもので構成されている。新聞社が完全デジタルに移行したのを機に、こちらに回ってきたという。だから35mmから4×5の伸ばし機、カラーヘッドもカラープロセッサーもある。そしてライカのフォコマートV35やダーストまで揃っている。あと、フォトクラブの会長さんの個人所有のフォコマートV35がもう1台と、なんとフォコマート2cまで並んでいるから驚きだ。
24時間、365日いつでも使用可能で維持費として支払ったのは一年間分として15.000円。合鍵も作って持たせてくれた。何ともありがたい。
本来なら自宅に自分専用の暗室があるのが理想だけど、今の家ではそれも難しい。スペースの問題もあるし、何より風呂場を利用した水洗では家人に気兼ねなく没頭する訳にもいかない。
いずれ自宅の敷地内にギャラリー、事務所、暗室の別棟を完成させるまで、当面この貸し暗室で焼かせてもらおうと機材一式を持ち込んだのだ。

今の家に越して以来暗室作業から遠ざかり、白黒をもう止めちゃおうかと考えた。インクジェットプリンターも良くなってきてるし、そんな手間のかかることやらなくても良いんじゃないかと。
しかし、この前の東京でのイベントにて、ボクの白黒写真をすごくいいと言ってくれた写真家、久しぶりに暗室入ろうと思い立ったと言う写真家、暗室止めちゃもったいないと言ってくれた写真家、フィルムとペーパーがなくなるまでとことんやりましょうよと言ってくれた写真家。そしてボクの白黒写真をオーダーしてくれた方がいてくれた。
すごく励みになったし、本当にいいものとは何かと考えた時、やはり白黒が残ると確信が持てた。まだまだ未熟だけど、取り組み甲斐のある伝統文化だと思う。
美術というにはおこがましいけど、トーンが奇麗に揃った白黒のネガは版画のような美しさがあって見とれてしまう。だから白黒は自分でネガを作ろう。先日のエントリーでカラー現像のBW400CNをお薦めしたけど、やっぱりダメだった。粒状の無いカラーネガはぺろんとして奥行きがなかった。
トーンでいくと中判が圧倒的にきれいだけど、35ミリネガからのプリントが立体感があって好き。あんなちっちゃいネガに凝縮された世界が、印画紙に投影されグレーだけで構成された一枚の絵になる。妙なドキドキ感がたまらない。
フィルムサイズには関係なしに、色を抜いた世界に物事の本質が見えそうな気がする。それが見えそうで、見えなくて、だから白黒写真は止められない。

20060408185601.jpg

偉そうな割に大した写真じゃないけれど、子供の何気ない一瞬も、白黒写真なら貴重な1枚になったような気がする。CONTAX G2 Biogon28mm Kodak T-MAX400
18:59 | 白黒写真 | comments (11) | trackbacks (0) | page top↑