小玉自転車店

   小玉自転車店 (釧路市)

  釧路は道東を代表する街であり、幣舞橋やフィッシャーマンズワーフMOO、そして和商市場など観光スポットも多い。駅前は近代的な都市の様相を呈している。
 しかし釧路駅の北口に回ってみると華やかな表玄関と違い、商店や住宅など庶民の生活の場としての顔が見えてきた。
 その駅北口に一軒、懐かしい自転車屋さんをみつけた。小玉自転車店。まず木枠のガラス戸を手で開けて店内に入ると、戸が勝手に閉まっていった。
「床が斜めになってるから、動力なしで自動に閉まるんだ」
そう言いながら店主の小玉定男さんが出てきた。このお店は昭和31年に創業した。来年で半世紀を迎える。狭い店内は何度も改装してきたが、借りているので立て替える訳にはいかないそうだ。年月を経るごとに出てくる不具合を、貞夫さん自らが手直ししながらこの店を守り続けている。
 木の床も所々反ったり曲がったりでフラットではない。ビスを落とすと店の隅まで転がっていく。長年のオイルの匂いが染みついたこの木の床のことを定男さんは
「こいつは自転車に優しい床なんだ」と言った。整備のために自転車を逆さにしたり横にしてもお客さんの自転車には傷が付かない。だからこの柔らかめの木の床が一番なんだと話してくれた。
 道東の拠点の釧路という場所柄、夏休みには自転車で旅する人が多い。小玉自転車店はそんな旅のトラブルの際の駆け込み寺にもなっているようだ。「どこで聞いてくるのか知らんが」多種多様な自転車が持ち込まれる。しかしそれに合わせてタイヤチューブもいろんな種類の在庫を抱えなきゃならないと苦笑い。それでも旅人の役に立てることが心底嬉しいのだろう。定男さんが修理する姿を思い浮かべてみた。
 最近では自転車の値段も下がり、故障したら投げ捨てて次を買い換える人が増えていると嘆く定男さん。この方はきっと物を大切にする人なんだろうと思った。
(JR北海道車内誌「THE JR HOKKAIDO」 '05年6月号に掲載)

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昨年の4月よりJR北海道の車内誌に連載している「忘れがたき駅前ふるさと」ですが、3月で1年契約が終了したものの、晴れて連載継続となりました。この4月より「新 忘れがたき駅前ふるさと」となって連載がスタートしております。
これまではJRの駅前に残る懐かしい商店を取り上げて来たのですが、今年度は駅そのものや駅前の風景に焦点を当てて行きます。

22:53 | 忘れがたき駅前ふるさと | comments (5) | trackbacks (0) | page top↑